第ニ話・餅は飲み物です(良い子は真似しないでください)
廚(くりや)に鼠がでなくなった。
庭先に来る雀の数がめっきり減った。
よく餌をもらいにやって来ていた野良猫の姿を見かけない。
そんな話を耳にする度、高虎の背筋を冷たいものが走る。
心当たりの張本人、生ける餅(のような生き物)は余人には見えぬらしい。
それはいつも傍らにある、というわけではなくふいの拍子に現れる。
ある時それが姿を見せたときに、口の端に小鳥のものとおぼしき足が覗いているのをみつけて、ああやっぱりと高虎は思った。
それを指摘すると餅は、
「オ餅ノ カビ ハ 根深インダヨ〜///」
と、照れてみせた。照れるな。意味が分からない。
餅は初めて出逢った時より確実に大きくなっている。
これ以上の被害を防ぐため、そして餅が人間に手を出す前に餌を与えねばならない。
というか、餅は人に喰われる物であって自らが喰うものではないはずなのだが。
ここで餅の嗜好通りに生き餌を与え続けるのは問題の解決に繋がらない。
動物以外の味を覚えさせ、少しでも危険を回避しなければ。
流石は策士の俺。
...ん、ということは、俺は一生こいつを養い続けるのか。
しかし今やさらなる肉の味を求めるこいつを城下に放つ事など出来ない領民思いの俺。(苦労性)
肉以外に食べられるものはあるのかと直接餅に尋ねてみる。
「餅ハ 餅ナノデ 餅ヲ 食ベマス!」
共食いか。つぶらな目をしてますます油断ならない奴。
曰く、餅が手に入らなかったのでこれまで肉で我慢してきたらしい。(あっさり肉食は認めた)
早速に用意させた餅を餅は飲むようにして平らげた。
餅がまた、少し膨らんだ気がした。
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