愛していました 殿
愛しているよ 初芽

 
お前はどう思うかわからないが
人生の最後にお前に会えて つかの間だったがお前と生きて
俺の生涯はなんと幸せであっただろう
そしてこれから産まれてくる俺たちの子
その顔を見たかったけれど それはどうも叶わぬ願いらしい
どうか どうか健やかに
これも因果応報というやつだ
ああ 初芽の泣く声が聞こえる
可哀想に そんなに泣くと身体に触る
どこからか さこん と俺を呼ぶ声がする
殿が俺を呼んでいる
あの時もそうでしたなあ
貴方は 左近死ぬな と泣いておられましたなあ
お許しください
左近はまた貴方を泣かせてしまいました
その声も次第に遠くなって 今はほとんど聞こえない
急激に冷えゆく身体
俺に触れてくる指先のぬくもりが心地よい
初芽 お前の中には常に消えることのない炎が燃えているのだね
だからこんなにも あたたかい
眠い 眠いな
初芽もう泣くな
俺は少し眠る事にするよ

  

 

 

おやすみ
初芽

 

  

 

 

 

 

 

 


終話・

終話・