SketchBook:6

知らない男の人×殿のウリ描写(しかも特殊系)があります。
慶兼要素があります。
苦手な方はここでウィンドを閉じて回避してください。

 

 
 

 

 

 

  

 

 2〜3日に1回くらいの割合でメールが入る。
 週末は特に忙しい。
 たまに一日に2件とか3件とか、重なる事があってそういう時は流石に身体がキツい。
 学校に行っても左近の周りにはいつも人がいて二人だけで話す機会はなかった。
 清正や正則は会えばなにかと絡んでくるが、最近はあまり自分たちで手は出さない。
 今日だって代わりにいつも知らない学生(多分他の科の連中だ)を連れて来て自分たちは見ているだけだ。
 空き教室に引っ張り込まれて散々好き勝手されて、そいつらがみんな出て行ってしまった後に珍しく正則が話しかけて来た。

『お前なんでこんなことやってんの。』

 こいつは何を言っているのだろう。

『なんでいつも人の言いなりになってんの。』

 こいつは何を言っているのだろう。

『のこのこ学校に顔出しに来てんの。』

 こいつは何を言っているのだろう。

『そのお奇麗で空っぽな頭で自分が人からどう思われてるか、ちっとは考えてみろよ。』

 こいつは何を言っているのだろう。

 わからない
 わからない
 わからない
 わからない

 こいつの言うことはうるさくて耳障りなただの音にしか聞こえない。

 それより、そうだ、今日こそ左近とお昼を一緒に食べよう。
 はやく行かなきゃ。また誰かに邪魔される。俺の左近を横取りされてしまう。

『気持ち悪ぃやつ。』

 俺に向かって正則は吐き捨てるように言って、ノートの切れ端を投げてよこした。

『それ、今日の“お仕事”。』

 

 

 

 

 部屋に入るなり服を脱ぐように言われて、その口調がひどく冷たくまるで家畜でも見るような目をしていたから、思うようにシャツのボタンを外す手が動かない。
 もたもたしていたら床にはり倒されて下半身だけを露出したまま縛られた。
 怖くなってやめてくれと叫ぶ俺に、今日の客の男は実に不思議そうな顔をして見つめる。

『君、なんでもオッケーなんでしょ。
 プロフィールにはそう書いてあったじゃない。
 こんな奇麗な顔してさ、あんな写真出すなんて相当好きなんだねぇ。
 大丈夫だよ。あとあと面倒だから残るような傷はつけるなって、やさしいオトモダチから聞いてるから。』

 バスルームに引っ張っていかれ、大きな注射器のようなものを使って腹がはち切れるような錯覚に陥るくらい生温い液体を入れられた。
 バルーンで栓をすると変態男はそのまま俺を放って部屋のカラオケでアニメの主題歌なんか歌っている。
 ものの数秒で全身に脂汗が滲む。
 断続的に襲うひどい腹痛が関節にまで響いて頭がぐらぐらした。
 身体の底から内臓がせり上がってくる感じがして、たまらず胃の中のものを吐き出した。
 たすけて。もう許して。なんでも言う事を聞くから。
 ゲロまみれになって床をのたうち叫んでいたらやっと男が来て、どうしても出したいかと聞く。
 必死に頭を振るとやっとバスタブの隣のトイレに座らせてくれたが、まだバルーンは抜かけない。
 男はズボンを下ろし、前髪を鷲掴みにして股間に押し付けた。

『上手にできたら許してあげるよ。』

 わなわなと震える唇にねじ込まれたそれは半分勃起していたが、心臓が脈打つ度に突き刺すような激痛と羞恥と恐怖のせいでまったく舌が動かせなかった俺は、いよいよ本気で男を怒らせてしまったようだった。

『ちゃんと“お仕事”しろよ。こっちだって高い金払ってんだからさ。』

 したたかに両頬を張られ混乱して泣き叫ぶ俺の姿は結果的に男をひどく興奮させたらしい。
 もう歯を立てる気力も無く乾いた咥内を使って扱き上げ、好き勝手に喉の奥に突っ込まれて息も出来ず、身体の内側を切り裂かれるような激痛も限界に達して、閉じたままのはずの視界が真っ赤に染まったと思った途端俺は気を失った。

 

 

 

 

 不運な事にホテルは泊まりになっていて、こんな男とは一刻も早くおさらばしたかったのだが、ここは随分な町外れで車でないと帰ることはできない。
 バスルームに毛布を持ち込んでそこで時間まで眠ろうとしたら、遠慮しなくていいからと男は自分の隣で眠るように言った。
 逆らったら何をされるかわからない。
 仕方なしに男のいるバカでかいダブルベッドに上がったが震えがとまらなかった。
寒いのかい。まったく三成ちゃんは手がかかる子だなぁ。
 鷹揚に笑ってみせて男は俺をまるでぬいぐるみみたいに抱き寄せるとすぐに寝入ってしまった。
 男の無遠慮ないびきに耳を塞ぎ、手足を小さく丸めて身を硬くし、ひたすら朝が来るのを待つ。
 翌日、男は別れ際にまた会いたいと何度も言った。俺の事をとても気に入ったのだと。

『君には素質があるよ。痛みを楽しめる素質だ。
 もちろん、肉体的な痛みだけに限った事じゃなく、精神的な痛みのことを僕は言っているんだけどわかるかな?』

 男はそんなことを始終勝手に実に熱っぽく喋り続けた。
 わかるはずないじゃないかこの変態。お前の言っている事なんてこれっぽちも理解できるものか。
 そう言ってやりたかったが、また殴られるのはごめんなので黙っていた。

 

 

 

 

 アパートのドアの前で鍵を探していたら隣の部屋から物音がする。
 こんな朝早くから幸村が遊びに来ているのだろうか。
 誰にしたって今は人に会いたくない。
 眠っていないせいで目の下にはくま。
 頬はげっそりと痩けているし髪はぼさぼさ。
 こんなみっともない姿を笑われたくない。
 なるべく物音を立てないように、息をひそめて鍵を開けたその時。

『よぅ、おはよう。』

 窓から顔を出して声を掛けて来たのは盛大に金髪を膨らませたライオンみたいな大男だった。

『あんたが三成さんか。兼続から話は聞いてるよ。』

 兼続は?と尋ねると金髪ライオンはちょっと後ろを振り返ってから答えた。
 まだ寝てるな。昨日は無理させちまったからねぇ。
 ライオンは愛おしげに目を細める。
 その仕草と、振り返った時に首筋に見えた真新しい鬱血。
 ああ、そういうことか。
 どうでもいい。俺には関係ない。
 関係ない、はずなのになんだかイライラする。
 へらへらと笑っているライオンを無視して叩き付けるようにドアを閉め、帰り着いた部屋は夏も近いというのにひんやりと暗く冷たかった。

 

 

 

 

 あとから兼続から聞いたが、あの金髪はデザイン科の2年生で慶次というらしい。
 つき合っているのかと聞けばそうではないという。

『時々会ってセックスするだけだ。』

 あまりにあっけらかんと言われては反応に困る。
 でも、そういうことをするのは好きだからだろう。
 口に出してみて、自分の言っている事の矛盾に気づく。
 自分は好きでもない相手と“そういうこと”をしてるのに。

『ああ、好きだな。
 私は三成も幸村も好きだよ。』

 じゃあお前、俺や幸村ともセックスしたいのか。
 少し考えてから兼続は、よくわからないと答えた。
 わからないから試しにしてみるかと言い出したので慌てて断る。
 よくわからないのはこいつのほうだ。
 こいつだけでない。
 正則もあの男もみんな、俺のわからないことばかり。