SketchBook:2
ガイダンスにも出ていないため履修のやり方が全く理解できなかったが、島左近という名のその助手がていねいに単位の取り方を教えてくれた。
どの教授の授業が一番単位が取りやすいか、教職は興味がなくとも一応取っておいた方がいいだとか、就職活動に供えて1、2年生のうちに卒業単位は確保しておくべきだとか、実に有意義なアドバイスを加えながら。
どうしてそんなに詳しいのかと聞いたら自分もここの卒業生なのだと言う。
3月まで博士課程にいて満期退学と同時に助手に採用されたらしい。
細々と制作も続けているんですよ、と笑う顔を見たら今度は胸がむず痒いのを通り越してずくずくと痛んで困った。
書類を提出し終えて帰ろうとしていたら厄介な奴らに捕まった。
清正と正則と、それに話もしたことがない男子学生が3、4人。
中にコンパの時の男が交じっているような気がしたが顔もよく覚えていないので分からない。
そいつらにロッカールームに連れ込まれて散々犯された。
殴られこそしなかったが、こんなに大勢に囲まれる事が怖いと初めて思った。
奴らは俺の中でみっともなくペニスを爆ぜさせながら、口々に罵る。
取り澄ました顔が気に喰わない。
でかい態度が気に喰わない。
ガキの落書きみたいな絵しか描けないくせに。
もう一度幼稚園のお絵描きから出直せよ。
一体奴らは何を言っているんだろう?
問いただそうとしても遠慮無しにぶちまけられた大量のザーメンが喉の奥に絡み付いて呼吸すら上手くできない。
ようやく奴らが満足した頃には、床の上に転がったまま指一本動かす気力も残っていなかった。
奴らは立ち去り際に、煙草の吸い殻を投げ付けるのと同時に携帯のカメラのシャッターを切る音をさせていったような気がしたがもうどうでもいい。
それよりどうやって家に帰ろうかと悩んだ。
着ていた物は力任せに引きちぎられてボロボロ。
窓の外はすっかり暗くなっている。
学生はみんな帰っただろうか。
今なら闇にまぎれて目立たないだろうか。
そんなことを考えていたら廊下をこちらに向かって歩いてくる足音がした。
守衛の巡回にはまだ少し早い。
奴らをかばう気もないが誰にしたって見つかれば説明が面倒だ。
息を殺して身を潜めていると足音はロッカールームの入り口で止まった。
『誰かまだ残っているのか?』
聞き覚えのある声、助手の左近だ。
彼の手にした懐中電灯の光が部屋の奥に向けらる。
『三成、さん?』
踞ったままの俺を見て、それから辺りに漂う男の匂いにも気付いた左近は言葉を失ったようだった。
『えっ...と、..あの、今、なにか着るものを..。』
やっとそれだけ言うと左近はすぐにモデル用の毛布を倉庫から持ち出してきてかけてくれた。
俺に気を使っているんだろう。
できるだけこちらを見ないようにしながら、足腰の立たない俺を支えて自分の研究室まで連れて行ってくれた。
『誰が...こんな..。』
手渡された蒸しタオルで身体を拭っていると、彼はそんなことを聞いて来た。
知ってどうするんだろう。
学級会でも開くつもりかな。
小学校のときみたいに、皆さん三成君を苛めないようにしましょう、とか言い出すのかな。
それよりも俺が貴方を守ります、なんて言ってくれたらうれしいのに。
そんなことを考えていたらまた胸がくすぐったくなって来て、くすくす笑っている俺を左近は不思議そうに見ていた。
それから左近が煎れてくれたコーヒーを飲んで、左近が作業着にしているツナギを借りてそれを着て、左近のバイクの後ろに乗せてもらってアパートまで帰って来た。
ツナギには油絵の具と、煙草と、コーヒーの匂いが染み付いていた。
アトリエでは嗅ぎ慣れたはずの匂いも、これが左近のものなんだと思ったら脱ぐのがもったいなくて、そのまま布団に入って眠ることにした。
ところどころ擦り傷のできた肌に直接触れる硬い布地が気持ち良く、何度も寝返りを打っていたらどうしようも我慢ができなくなり、自分でした。
あれだけ搾り取られてもう1滴も残っていないと思ったのに、まだ反応するなんて不思議だ。
夢中になっていたらツナギの中に出してしまった。
洗濯すればバレないだろうか。
俺が汚したものを着て、絵を描く左近を想像したらまたあそこが張り詰めてきた。
ああ、今日はなんて幸せな一日なんだろう。
明日からもがんばって学校に行こう。
HENTAI!!(私が)
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