その娼館にいるのは若く美しい女ばかりとは限らない。
 男、それも随分薹(とう)のたった逞しい身体の持ち主までもが客の要求に応じて様々に痴態を演じてみせる。
 さらに驚くべきは、その者たちは皆等しく楼主の所有物、もっと分かりやすく言えば妻であったり愛妾であったり、さもなくば深く寵愛を受ける身であるのだという。
 楼主は自分の愛する者たちがその夜出逢ったばかりの見も知らぬ客に組み敷かれ、漏らす嗚咽に耳を澄まし、のたうつ肉を覗き見ては愉悦に浸る。
 その者たちは自らが絶対と仰ぐ主人を悦ばせる為に、命じられるがまま客たちの求める悦楽に我が身を饗するわけだが、それは彼女、彼等にとってはひとえに主人への愛の証しであるのだろう。

 
 
 何故楼主はこのように歪んだ欲望に耽溺するのであろうか。

 
 
 一説に彼はごく若い頃に人身に余る能力を天より授かるに至り、それと引き換えに性的には不能者となったのだともいうが、本当のところは定かではない。
 私がそのような淫楽の館に脚を踏み入れるきっかけとなったのは、私が一時この世で唯一無二と愛した青年が今はそこで身をひさぐ姿を見たと風の噂に知ったからである。
 

 
 しかしそこは、現世(うつしよ)のソドムとゴモラ。
 ありとあらゆる悪徳が快楽の名の下に是認され、人の定めし戒律も遠く及ばない。

 

 

 

 

 

 これは、私がそこで変わり果てた恋人に再会し彼と私と世界の全てを呪うに至るまでの極めて卑小な大冒険の物語--。




  

  

 
   

     


とりあえず忠勝とお勝様と井伊と細川は常時ラインナップ。徳川のキレイどころですもの