「殿、今宵は少し趣向を変えていたしてみましょう。」
お互いほろ酔い加減で良い気持ち。夜着に着替えて床の上、の、このタイミングでこの発言。どうせろくな事ではない。と、いう三成の胸のうちは露骨に表情に出ている。
左近はそれにもひるむ事無く続けた。
「殿、これは左近がマンネリ気味の殿との夜に新たな刺激をと試行錯誤の末に編み出した策なのです!」
普通に睦みあうのもそれはそれで心地よい。甘い言葉で誘い出し、口づけを全身にあびせて、慎ましやかな主の身体をじっくりと開いていくのも楽しみの一つ。
しかし、それも夜毎続けばたまには変わった趣向にも触手をのばしてみたくなるというもの。
「“まんねり”とは?」
「っと、ともかくこの左近の策、殿は御取り上げにならぬのか!」
「..と言われても..なぁ。」
「この策、画餅に帰すおつもりか!」
間髪入れずに左近は続けた。
「それこそ義に反すると言うもの!!」
この決め台詞。
最近北国の文通友達、兼続の影響を多分に受けて“義”という言葉に弱い三成の心をいささか揺さぶったようである。
この際その意味が通っていようといまいと関係はないのだ。利用できるものは全て利用する。
左近は曲がりなりにも軍師なのである。
ありとあらゆる策を駆使して自らの求めるところを実現する!のが仕事なのである。
「ではその策とやら、聞かせてもらおうか。」
興味を抱いたらしい主人を前に、ここはひとつ、と左近は腰を据えてワントーン低い声で持ち前の渋さを演出しつつ熱く語り始めた。
「ご主人様と召使いぷれい、とでも申しましょうか。
今宵は左近が殿の“ご主人様”となり、殿には左近の命に従っていただきます。
つまりですね、殿が左近にご奉仕していただくということです。」
「下克上ということか!?それこそ不義ではないか!」
「あくまで“ぷれい”です、殿!
それに閨のことに主従を持ち出すのは無粋というものですぞ。」
ぷれい、ということの意味が分からない三成だが忠実な家臣の左近がここまで熱意を帯びて語る策、と思うと無下にはできないのがこの主の抜けたところ、いや世間知らず、いやいや純真なところである。
「むぅ..左近がそこまで練った策、試してみるのも良いかもしれん...。」
真剣な顔でうなづきつつ、左近は胸の中で大きくガッツポーズをきめた。
左近殿、ご謀反! それにしても殿はここまで不憫な子ではないという突っ込みは無しの方向で ぷれいに続きます
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