一期は夢よ 只 狂え

 

 

 

「...というように、家康の動きが...って聞いているのか三成。」

 
 行長は書状から目線を外し、向かい合って座っている三成を見た。
 

「どうした、顔が赤いな。」
 

 よく見れば夏でもないのにうっすらと額に汗を浮かべ、呼吸も速い。


「そっ、そうか?」
  

 返す言葉もうわずっているように感じる。
 

「話も上の空だし、熱でもあるのではないか?」
「ぁ..そ、そうかもしれん..。」
 

 そう言ったきり、朱に染まった顔を伏せてしまった三成。
 ふぅ、と行長はため息をついた。
 この様子では軍議はおろか会話すらままならないではないか。
 困ったものだ、という目線を側に控えた石田家の家老に送る。
 行長の非難めいた視線に気付いたであろう左近はしかし、その表情になんの色も浮かべなかった。
 

「では俺は失礼するよ。どちらにせよこれでは話にならん。」
「すまない..。」
 

 帰ろうと立ち上がった行長に三成は小さな声で謝罪した。
 

「見送りは必要ない、養生しろよ。」
 

 代わりに左近がすっ、と立ち上がって行長を玄関まで導く。
 

「...余計なことかもしれないがな、」
 

 庭に面した回廊を歩きながら、行長は脇に控えた左近に言葉を向けた。
 

「あんまり三成を泣かさないでもらいたいものだな。」
 

 ふぅ、とため息をつく行長に左近は曖昧に笑ってみせた。

 

 

 

 

「小西様はお帰りになりましたよ。」
 

 行長を見送って座敷に戻ると、三成は正座のまま上半身を畳の上に伏して倒れていた。
 意識を失っていない事はその腰の辺りが小刻みに揺れている事でわかる。
 

「あぁ..さこん..。」
 

 見上げてくる恨みがましい視線には常の氷のような威勢は少しもない。
 

「あれはお気づきになっていたでしょうなぁ。」
「そんな..こと.。」
 

 今にも泣き出しそうな声で三成は呻いた。
 先ほどの自分の様子を思い出してみる。
 熱でもあるのでは、と行長は言ってくれたではないか。うまく取り繕えたと思っていたのに。
 

「いいえ、きっとお分かりだったでしょう。
 殿がこんなになっているのを。」
 

 折った足をほどかせ、腰を持ち上げて獣の姿勢を取らせる。
 力の抜けた三成の身体は人形のように左近の力強い手にいとも簡単に操られた。
 

「ひっ..。」
 

 抱き込むように前に手を回し、袴の紐を解いて下ろすと白い腰部が露になる。
 その中心、肉の盛り上がった間から、短い尻尾のようなものが覗いている。勝手に抜け出ないように下帯をきつく締め付けられたそれは一刻ばかり前、行長が訪ねてくる直前に左近によって施された性具。それだけではない。前はといえば屹立した男根をがんじがらめに細紐が戒め、不用意に達する事を留めている。
 当然、嫌だといって抵抗はした。けれど、組み伏せられれば力で左近に叶うはずも無く結局は思うがままにされてしまったのだ。
 さらに三成自身は気付いていないが、潤滑油だと言って後ろに使われた液体には、本来の目的以外にかゆみを引き出す効果もあった。それほど酷いものではないが、ちりちりと弱火であぶられるような刺激は絶え間なく、今この時も三成の内部を責め立てている。
できるものなら中を掻きむしりたい。入れられたまま放っておかれた玩具にいっそう熱を煽られ、三成は極限の状態のまま行長の応対をしていたのだ。
 

「これ、もぅ..抜いて..。」
「抜いてしまってよろしいのですか?本当はこうして欲しいのではないですか?」
 

 三成の要求を無視し、下帯をいとも簡単に外すと左近は尻から突き出た玩具を握って緩くかき回した。
 

「ぁ..いやぁ..ぁ..。」
 

 しかし温い責めは疼きを増しこそすれ、何の救いももたらさない。
 

「..さこん..ッ」
「 どういたしました?」
「も..っと..」
「もっと、どうされたいのです?
 

 きちんとおっしゃっていただかないとわかりませんな。」
 かゆみの広がる粘膜をさらに羽で愛撫されているような、これが痛みであったのならどれだけ救われただろう。この種の刺激に耐える事に慣れていない刺激に三成の思考は翻弄され、普段ならば口にする事も憚るような欲求がわななく唇から漏れた。
 

「も..もっと..つ..よく..ッ..!」
「強く?強くどうされたいのです?」
 

 けれど左近は残酷だった。精一杯の羞恥に耐える三成にさらなる要求を強いたのだ。
 

「ぁあ..ん..」
 

 その間も止まる事無く続く責めに、三成の揺らめく腰が獣的な動作を強くする。もう外見等構っている余裕は無いと、何より身体が、本能が訴えている。このままでは、そう、このままでは狂ってしまう。一刻も早く強い刺激が欲しい。
 

「殿、我慢せずにおっしゃってくださいませ。
 ほら、こちらもこんなになって。殿が正直になるのを待っておいでです。」
 

 左近は畳に爪を立てる三成の指を引きはがし、放っておいた男根へと導く。
 触れさせるとそれは最初こそ戸惑いをみせたものの、素直に自分の猛りに指を這わせ始めた。紐できつく拘束されたものを視覚ではなく触覚をもって確かめるような動きから、だんだんと直接的な欲望を満たして行くためのそれへと変化し、ついには果てを求めて激しく擦り立てる。
 

「そのようにされては、余計お苦しいでしょうに。」
 

 くっくと笑いを含んだ左近の言葉ももはや三成の思考には届いてはいないのかもしれない。
 

「殿...。」
 

 脂汗をにじませて悲壮に眉を寄せる三成の耳元で、息を吹きかけるようにして左近は促す。
 

「どうぞ、左近にご命じください。
 “もっと強く犯して欲しい”、とね。」
 

 三成が口を開きやすいようにと、左近は主人の小さな頭をこちらにむかせ、現れた唇を自分の舌で舐めとった。口の際の柔らかな粘膜を刺激されて、がくがくと、と三成の顎が揺れる。
 

「さあ..殿..。」
「..もっと..」
「殿。」
「..もっ..とっ、もっと..強く..か.き回し..て..ッ!」
 

 左近の耳元にやっと届くか届かないかと言う吐息のような声であったが、主人は確かに陥落を口にした。
 

「よく言えましたね。」
 

 にこり、笑って左近は三成に軽く口づけを贈ると、途端に手にした玩具を激しく動かし始めた。
 抜け落ちるギリギリまで引き、その直後に腹をも突き破らんばかりに深くえぐってやる。
 だんだんとその速度を増す暴力にも似た摩擦に内壁を犯され、三成の身体は断末魔に襲われたようにばたばたと跳ね踊った。待ちこがれた刺激に、疼いた粘膜が歓喜する。与えられるものをどん欲に貪ろうと、自然と腰が左近の手の動きに合わせて前後する。
 腹の中に生じた悦が凝縮されて一カ所に集まり、それが爆ぜようとしたその刹那。
 

「ひゃぁ..ンっ!!」
 

 解放の許されない絶頂に三成の身体は大きく痙攣した後、畳の上に打ち伏せた。
 

「ど..して..こんな。」
 

 ひゅうひゅうと荒い吐息に混じって泣く声。
 

「どうして?
 特に理由などありませんな。」
 

 それとも、と左近は続けた。

 

 

 
「殿を左近だけのものにしておきたいと言ったら、殿は叶えてくださいますか?」

 

 

 

 


 

エロいだけのお話を書きたかったと断言したい(勝手にしろよ)
左近、一方的杉
途中で力つきました。次回へ続く