「何か手伝う事はないか?」
日曜日の昼の、退屈な娯楽番組にも飽きた恋人がキッチンに顔を覗かせる。
きれいに伸ばされたラビオリの生地に具を乗せながら左近は指示を与えた。
「じゃあ、殿はテーブルのセッティングをお願いします。」
よし、まかせておけ、とうれしげにいそいそと戸棚からスプーンやフォークを取り出す三成。
「殿、何故そんなに必要なんです?」
三成の手に握られた食器の束を見て左近は首を傾げた。
恋人同士、二人だけの遅めのブランチ。フォークもスプーンも二組あれば十分なのに。
「幸村と兼続にも声をかけているのだ。きっともうすぐ来るぞ。」
「殿!また勝手な事を。
っていうか、そういうことは早めに教えてください!」
残業続きでしばらく別々だった食事。久しぶりの休日くらい、二人きりの食卓を...と思ってとっておきの白ワインだって確保していたのに。
いや、その前に急遽もう二人分作り足さなければ。
冷蔵庫の中の材料を確認している左近に追い打ちをかけるように三成の携帯が鳴った。
「あ、紀之介か。うん、いいぞ。今めしの支度中だから。」
待ってる、と明るく言って三成は電話を切った。
「殿、今のってもしかして。」
「うん。紀之介が行長つれて来るって。楽しくなりそうだな、左近。」
さらに二人前追加。事態は既に立派なホームパーティーの様相を呈して来た。
「殿ぉ...。」
作るこちらの身にもなって欲しい。材料だってギリギリだ。何より二人っきりの休日が...。 けれど。
「だって飯は大勢の方が良いだろ?
左近、頼りにしている。」
最後の一言には逆らえないのが鬼の左近の泣き所である。
それに、普段は放っておけば毎食を栄養ゼリーで済ますほど食に関しては興味の薄い三成が食事を楽しみだと言うのだから、自分がいない間に随分と寂しい思いをさせていたのかもしれない。
ここでせめてもの罪滅ぼしとばかりに左近は気を取り直して使えそうな食材を漁り始めた。
数十分の後。
ピンポーン ピンポーン
玄関のチャイムが来客を告げる。
パタパタと足音を立てて三成が迎えに出る。
「こんにちわー。お邪魔しまーす。」
「邪魔するぞ、三成。」
「すぐそこで会うてな。一緒に来たんや。」
これ、おみやげです、と言って幸村が洋菓子店の包みを差し出す。
「うわぁvトップスのチョコケーキだぁvvでかしたぞ幸村!」
静かだったリビングが一気に人の声で満たされる。
「おぉ、左近、すごいな。プロのデリバリーかと思ったぞ。」
色とりどりのアンティパストからフリットミスト、キチンのトマト煮込み、カポナータにラビオリのクリームソース。
ストックしていた食材を総動員してどうにか形を整えた食卓は即席のパーティーにしては十分なものだった。
「左近も早く!」
三成にせかされて既に一同がそろった席に着くとそれを合図にワインが開けられ宴は始まった。
「美味しいです!左近殿!」
「む、このフリット中身はイカだな、兼続。」
「どうしてそこで私に話をふるのだ大谷殿は。」
奪い合うように皿を空にしていく幸村や行長につられてか、三成もしきりに匙を口に運び、グラスを傾け、笑っている。
自分と二人きりの時のとろけるような笑みもいいが、こうして仲間と呼べる人々に囲まれて見せるくったくのない笑顔も愛らしい。
にぎやかな食卓もたまには悪くない。
「...とはいえ、左近もたまには殿と二人きりで休日を過ごしたいのですよ。」
「わかっている。...すまない、左近。」
「次こそは!殿と左近のラブラブランチを!」
「左近もいつまでも俺を放っておくな。俺とて寂しい事もあるのだからな(ボソリ)。」
「善処いたします!(殿かわい〜v)」
現代パロお友達が増えたよ編
なんだかいつもこのパターン
みったんにお友達が増えてうれしい反面、ちょっとだけ寂しい左近
子供の成長を見守る母親のような心境です
年齢設定は三成24歳、左近は三成と20歳差で渋い44歳とかがいいなぁ
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