「..きれい..だ。」

 
 深く自身を突き入れ、褥に縫い止めた三成の口から漏れた言葉に左近は一瞬律動を止めた。
 そんな言葉が主人から、この状況で、しかも自分に向けて発せられるとは。
 

「お前は..きれいな男だ..左近。」
 

 長く伸ばされた黒髪が動く度に踊るのも。
 そのうちの幾筋かは汗で首筋に張り付いているのも。
 全身を覆う戦う為の筋肉が、今はお互いの悦を貪る為だけに使役されているのも。
 三成にとっては自分には無いその全てが目映いものに思えてならない。
 

「...随分と余裕のようですね。」
 

 過ぎた快楽に頭を侵されてのうわ言とでも思ったのか、動きを止めていた左近がぐっと、強くねじ込んで来た。
 

「ヒッ..ぁあ!」
 

 同時に硬く尖ったまま放っておいた三成の性器を握り込んで先端を親指の腹で強くこすってやると、高くあがる嬌声。
 

「よ..ゆう..なんて..ッ」
 

 余裕なんてものは何時の時だって感じた事など無い。
 いつも、どんな時もこの男に翻弄されている。今だってずっと見とれていたではないか。
 左近のむき出しの肉欲が速い速度で湿った粘膜を擦り上げる。
 ごく薄い皮膚を隔ててお互いの体温を感じ合う。
  これほどの熱を他人と共有できるなんて、左近と出逢う前には知らなかった。

「ぁっ..あっ..あっ!」
 最も感じる箇所に刺激を与えられる度に、三成からは押し出されるようにして甘い悲鳴が漏れる。
 

「出るっ..出てしまうっ..さこ..ん!」
 

 先ほどから嬲られ続けている先端の小さな孔に爪を立てられ、三成は陥落がすぐ側まで来ていることを予感した。
 左近によって与えられる前後から全身に走る小さな稲妻にも似た痺れ。
 身体がさざ波のように震え始め、そしてやがて訪れるであろう津波に大きな期待とほんの少しの恐怖を抱く。
 

「我慢せずお出しください、たっぷりとね。」
 

 にやり、と笑って左近は仕上げとばかりに激しい律動を再開した。
 

「ぁっ..ヒッ..ぁあ..ッ」
 

 がくがくと顎が鳴るほど揺さぶられ、左近の手に預けた性器も激しく擦り立てられる。
 二つを同時に責め立てられれば三成に逃れる術など無く、限界はすぐに訪れる。
 

「ぁ..もうっ..!」
 

 ぐん、とひときわ大きく身を反らせて三成は果てた。
 脳髄が焼き切れたような衝撃を追って、性器からとろとろと熱が流れ出ていく。
 

「との..さこんも..」
 

 呆然自失といった様子で涙に濡れた半眼を宙に漂わす三成の耳元で左近は囁いた。
 何を言ったのか。頭の中を真っ白に塗りつぶされたばかりの三成には理解できていないだろう。けれどその吐息の何と優しく、心地よいことだけは知覚できる。
 

「ぅ..おッぉ..」
 

 獣のような咆哮をあげて左近が動きを早める。
 霞んだ目で見上げたその顔は、眉間に皺を寄せ、ひどく苦しそうにも見える。
 早く、一時でも早く、こちら側に来て欲しい。自分の味わった悦を、彼にも早く。
 三成は残された体力を使って腰を左近に擦り付けるように淫らにくねらせた。
 左近の身体がびくり、と大きく震える。
 

「うっ..んッ.。」
 

 身体の奥深くから吐き出されたような声が頭上から降り落ちた時、三成は体内に熱の塊が産まれた事を感じた。
 

「ふ..ぅ...。」
 

 最後の一滴までも三成の中に全てを吐き尽くして、左近は深く息をついた。
 

「さこん..。」
 

 伸ばされた三成の手を取り、その指先に口づけして左近は笑ってみせた。
 先ほどの切なげな表情のかけらも無い、陽のような笑顔。
 こんな時、つくづくきれいな男だと三成は思うのだ。

 

 


エロを書くリハビリを!と思ったのですがあんまりでした
殿は心の中では思っていても「きれいだ」なんて決して口に出さないだろうなぁ
そこはソレ、左近が相手という事で