「ぶえっくしょんっ!!」

 
 寒い冬の朝、盛大なくしゃみの音で三成は目を覚ました。
 

「えっくしょい!!ぶぇっくしょい!!」
  

 立て続けにもう2回、聞こえる轟音に夢うつつの目をぱちくりとさせて辺りを見まわす。
 

「左近?」
 

 どうやらその音源は隣で眠る恋人らしい。

「どうしたのだ、左近。」
 

 おそるおそる顔を近づけて様子をうかがうと左近は重たげに瞼を上げた。
 

「との、ふかくながらこのしゃこん、かぜをひいたようでふ..っくしょん!」
 

 明らかに鈍い滑舌に、ぼやけた視線。
 いつになく頬が赤く火照っているのは熱があるからだ。
 

「さいわい のろ でも いんふる でもないようですが だいじをとってきょうはいちにちねておりまふ」
 

 鼻をぐずぐすと言わせながら、左近はそれだけ伝えるとまた苦しそうに目を閉じ、布団を頭からかぶり直してしまった。
 

「...そうか。大事にいたせ。
 と、いうことはしばらく左近は家事の一切はできぬな。」
「との?」
 

 悪い予感に左近は布団の裾から頭を覗かせる。
 そこには普段、とみに寒くなった近頃では、なかなか一人ではお布団から出れない三成が颯爽と起き上がった姿があった。
 

「いよいよ日頃磨いた俺の腕の見せ所といったところだな!」
 

 起き上がることの出来ない左近を見下ろし、三成はふふふ、と不適に微笑んでみせたのだった。

 

 

 

 

 それからの三成の行動は、その自信に沿いつつも、左近の予測通りのものだった。
 洗濯機に汚れ物を選別すること無くぶち込み、すっかりそれらを忘れたままご機嫌で今は別にやらなくても良い掃除という名の破壊工作に従事する。雑巾をかければバケツをひっくり返して床を水浸しにし、掃除機をかければ左近の読みかけの本の山を凪ぎ払い、自らもコードに足を引っかけてすっ転んだ。
 いつもなら左近が何を置いても駆けつけて、傷口をふうふうしてくれて、念の入った手当もしてくれて、痛いの痛いの飛んで行けのおまじないを施してくれるはずが今日は泣こうがわめこうが誰も助けてくれない。
 

--こんなの痛くない!俺は泣かないぞ、左近!
 

 三成は一人で立ち上がることのできた自分を褒めた。

 

 

 

 

「夕飯はどうする?左近。」
 

 午後のお茶で一息つきながら三成はリビングのソファに布団ごと移動して来た左近に尋ねた。
 本当ならば寝室で静かに寝ていたかった左近であるが、隣の部屋から時折盛大な物音と共に聞こえてくる“ぎゃっ!”とか“ぐわっ!”とかいう叫び声にいても立ってもいられなくなったのだ。
 昼は左近の提案でピザにした。しかし毎回毎回店屋物というわけにはいかない。
 不経済だし、何より栄養が偏る。病身の左近にこそバランスの取れた栄養のつくものを食べさせてやりたいではないか。
 

「こにしどのから、かんこくのおみやげとやらで、ほんばのキムチをいただいておりまふ。
 こんやはこれでキムチなべなんていかがでふか?」
「うん、それはいいな!」
 

 左近の提案に、最近鍋にハマっている三成は顔を輝かせて同意した。
 そう、鍋ならば。
 鍋ならば野菜を切って鍋で煮込むだけで良い。いくら三成が破滅的なまでの料理下手とはいえある程度の形のものが食べられよう。左近としては牛テールのスープからダシを取りたいが、口に入るのならばもうこの際既製品のつゆでもなんでもかまわない。あとは三成が指を切らずに野菜を切って、ガスレンジが煮込んでさえくれれば良いのだから。
 島左近、熱でぼんやりする頭で考え抜いた上で軍略だった。

 

「よいですか、との。
 このメモどおりにかってきてくだしゃい。
 よけいなものはかわないように。
 とくにおかし、ジュースのたぐいはごじちょうくだしゃれ。」
「わかった。」 
 

 買物用のメモを渡され、念に念を押された事に気を損ねたのか、少しむくれっ面で三成はうなづいた。それでもお使いという大任をまかされたことに気分は上々で、すぐに機嫌を直し意気揚々と明るい髪色に映えるターコイズブルーのダッフルコートに身を包んで玄関のドアノブに手をかける。
「とのぉ、どうろをわたるときはさゆうにきをつけてぇ。
 みちばたでねこにえさをあたえないようにぃ。
 へんなひとがおかしをあげるといってもついていってはだめですからねぇぇぇ。」
「わかっておる!恥ずかしい!!黙って寝ておれ!!馬鹿めが!!」
 伊達殿の混じったまま大一大万大吉号(ママチャリ)を駆って出かけていく三成を、全身を襲う寒気に耐えながらもマンションのバルコニーから見送る左近の心境はまさに“はじめてのおつかい”を見守るおかあさんそのものだった。

 

 

 

 

@白菜 まるごと1個
@キャベツ 同じくまるごと1個 
@もやし 1袋
@にら 1束
@豆腐 1丁
@豚肉 1キロ
@キムチ鍋のスープ 1袋

 極めてアンバランスな材料配分。
 ...なんで、こうなるんだ。メモにはしっかり分量まで書いたではないか。
 いや、メモした物を忘れずに全て買ってきただけでも良しとせねばならないのか。
 左近は鈍痛のする頭を抱えた。
 

「白菜とキャベツが安くてな。今年は豊作らしいぞ。
 八百屋のおじさんがきれいな奥さんだね、なんていうもんだからつい。
 あ、肉はな、やはり左近に力をつけてもらおうと思って大目に買ってみたんだが。」
「これだけ買ったら重かったでしょう...。」
 

 左近の病状は昼に飲んだ薬のせいか幾分回復して来ているらしい。声はまだ掠れているものの呂律はしっかりしてきている。
 

「あのしゃべり方は書くのが大変ですしね。」
「大変て...誰が...」(だまれ)
 

 テーブルに並んだ材料を前に、これまた自信たっぷりの様子で三成は腕まくりを始めた。
 

「さて、それでは調理をはじめるか。」
「え、殿。まだ4時ですよ。」
「鍋物は煮込みが肝心なのだ。
 それに正直、俺は料理には不慣れだ。どんなアクシデントが起きぬとも限らん。
 あらゆる事態に備えてこその策ではないか、島左近。」
 

 そう言うと三成は奥の自分のクローゼットにひっこんでなにやらごそごそとさがしている。
 

「何を探しているんです?」
「料理にはまずコレだろう!」
 

 どうだ、似合うだろう!と、三成が取り出した物は、純白にかがやくミニ丈のひらひらフリルエプロン。
 

「とっ、殿、そんな、萌え、じゃなかった素敵なものをどこで?」
 

 のぼせた頭のせいもあってか、今にも吹き出しそうな鼻血を押さえて左近は尋ねた。
 

「この前、紀之介の店を手伝った時に借りて返し忘れていたのだ。このような時に役に立つとはな。」
「なんですとっ!?その格好で不特定多数の男ども(注:女性客もいます)の卑猥な視線に接していたのですか!?」
「これだけじゃないぞ。」
 

 再び三成はクローゼットをかき回す。そして出て来たのは同じく純白のレースのカチューシャだった。それを頭に乗せてくるりと一回りしてみせる三成。
 ちょっと待て、と左近は思う。
 カフェ・ド・関ヶ原の店員がそんな格好をしているのを一度も見た事が無い。
 性格はともかく外見は世間では“萌え”な部類に入るバイトの女子高生とて黒のロングスカートワンピースにキャップの地味な英国風クラシックメイドスタイルじゃないか。
 人の目の届かぬところで好き勝手やりやがって。とはいえ...グッジョブ、大谷。
 心の中で左近は今頃は何も知らずにコーヒーを煎れているであろう大谷に感謝の眼差しを送った。
 

「確かに素敵なお衣装でございますが、殿は着付けを間違っておられます。」
 

 突如我が家に現れた愛らしいメイドさんに目を細めつつも、左近はこの際さらなる萌えを追求することも忘れない。
 

「そう..なのか?紀之介はこれで“かわいい”と言ってくれたぞ。」
 

 三成はポーズをとるのを止めて小首をかしげた。
 

「エプロンとはそもそも服を汚さぬためのもの。
 このようなミニ丈ではキムチ汁が跳ねでもしたらいかがなさる。
 染みになりますぞ。そしてその染みを抜くのはこの左近の仕事となるのです。
 殿は左近の仕事を増やすおつもりか!それこそ不義!」
「ぐっ..それも、そうだが...しかし、どうすれば..。」
「左近が正しい“エプロン”の着付けを教えて差し上げます。」
 

 そう言うと左近はぽいぽいと手早く三成の衣服を脱がしてしまう。下着も残さずに取り去るとそこで押し倒したいのをぐっとこらえ、再びエプロンを身につけさせた。
 そこには、いわゆる裸エプロン+カチューシャという、ある種の男にとってファンタジーの領域ですらあるシチュエーションが実現されていた。
 

「確かに..これでは衣服の汚れる心配は無いが...。」
 

 当たり前である。その服自体が無いのだから汚れるわけはないんである。
 少し寒い、とグズりつつも三成は左近の幸せそうな笑顔を見ると何も言えなくなる。
 結局これも病身の左近を喜ばせるためならぱと自分を納得させ、その格好で調理に取りかかることにした。
 まずは野菜を全て丸洗いし、まっぷたつに切って寸胴鍋にぶち込む。具材に対してスープが極端に少ない気がしないでもないが白菜から水分がでるので大丈夫なのだ(と、左近が言ってた...気がする)。
 肉もほぐすことなくそのままイン。ついでに豆腐も投げ込んだ。市販のスープだけでは味気ないと思った三成はここで気をきかせ、左近がいつか特別な日の為に大切にとっておいたコート・ド・ニュイ・エシェゾーをワンボトル流し入れる。鍋の出汁にはお酒が合うのだ(と、左近が言ってた...気がする)し、なんか赤い物同士でいいかな、と思ったのである。
 幸か不幸かソファの左近は恋人の可愛い姿を鑑賞するのにご執心で、彼が(まさに食べる者の命運をかけた)サバイバル料理を繰り広げ、その影で自分の大切なグラン・クリュが煮立っていることに気付いていない。 
 仕上げとばかりに小西土産のキムチ3kg全てを一気に投入し、蓋をして一息ついていると、ふいに今まで料理に夢中で気付かなかった熱い視線を感じて三成はリビングの左近の方を振り向いた。
 

「なっ、お前、何をして!」
 

 そこに、眠っているとばかり思っていた左近の思わぬ姿を見つけて三成は声を震わせた。
 毛布の下で下半身をごそごそとまさぐるのを止めようともせず左近は屈託なく笑ってみせた。
 

「何って、ナニですな。殿の可愛らしい姿を見ていたら辛抱できなくなりました。
 どうぞ殿はお仕事をお続けください。」
「おっ、お前がそんなことをしている隣で料理なんかできるか!」
 

 目の前で自分をおかずに自慰などされて平気でいられるはずが無い。
 左近がそんなことを始めてしまうなんて、もしかしたら今のこの裸にエプロン一枚という姿はとてつもなく恥ずかしいものなんじゃないか。途端に常識を取り戻した思考に、三成は熱のあるはずの左近よりもずっと顔を赤く染めて俯いてしまう。
 

「では殿が手伝ってくださるか。
 風邪の時は汗をかくと良いと申しますからな。」
 

 手招きされて恐る恐る近づいて来た三成を、左近は腕を伸ばしてソファのすぐわきに抱き寄せてしまった。
 

「さあ..殿。」
 

 促されるまま三成が震える手で毛布を取り去り、左近のスウェットを下着ごとずり下げると、勢い良く逞しい性器が飛び出してきた。
 

「お、おれを見ていてこんなになってしまったのか、左近は。」
 

 既に固く隆起したそれに三成の目は釘付けとなり、ごくりと喉を鳴らした。
 

「そうですよ。殿が左近をこんなにしてしまったのです。
 責任とってくださいますよね。」
 

 三成とて男だ。この状態で放っておかれるのが楽ではないことくらい身をもって知っている。
 左近の苦しみを少しでも楽にしてやる、これも看護のうちではないか。
 こくり、とうなずいて三成はそれにそっと、指を伸ばした。
 まだ体温が高いのだろう。触れた先から伝わる熱さに胸が高鳴る。
 台所仕事で冷たくなった白い指がそろそろと自分の物に絡み付く心地よさに左近はため息をついた。
 

「お上手ですよ、殿。」
 

 褒めてやると、調子づいた指は大胆に動き始める。
 自分は丸太のままで奉仕されるというのは大層気持ち良いが、このまたとない機会に素直に出してしまうのももったいない。今なら風邪という言い訳を盾に、もう少し我が儘を言ってもバチは当たらないはずだ。
 やがて左近の思惑通り、指での愛撫は舌をつかったものに代わり、同時に膝立ちになった三成の腰が揺らめき始めた。と、同時に恋人の身体に現れ始めた変化を左近は見逃さない。
 

「殿、エプロンをめくってみてくださいますか?」
 

 さらに興が乗ってむしゃぶりつこうとする小さな頭を押しとどめて命じてみる。
 糸を引きながら、名残惜しそうに口を離すとほんの少しの逡巡の後に三成は言われるがままにフリルの裾を掴む。
 白い前布には既にうっすらと丸く染みが出来ていて、布が離れる時に触れていた性器の先からとろりと蜜が滴った。
 

「おやおや。左近のものをしゃぶっているだけでこんなにぬるぬるになってしまわれたのですか。
 殿はいやらしい子ですな。」
 

 重い身体を動かす代わりに言葉で愛撫してやれば、三成はさらに顔の朱を増してそっぽを向いてしまう。
 

「そんなこと..左近だって同じではないか!」
「そうですよ。だから一緒に楽しみましょうね。」
 

 あっけらかんと言うが早いか、左近は病人とは思えぬ力で三成の身体をソファの上に引き上げると腰を自分の頭の方に向けて四つん這いの姿勢をとらせた。
 自然、三成は左近の顔面に、左近は三成の顔面に、お互いの下半身を晒す格好となる。
 

「さぁ、殿。先程の続きを。」
 

 促されて、三成は再び左近の猛りに舌を伸ばす。ぴちゃぴちゃと唾液を絡ませる音が聞こえて、左近もまた眼前で可愛らしく揺れる三成の性器を軽く握り込んだ。
 

「んふぅっ。」
 

 そのまま扱き上げてやると快楽に弱い三成が自分のものを銜えたまま身悶える。それもまた刺激となって、それをもっと味わいたくて、左近はさらに愛撫の手を強めた。
 

「ぁあ..さこん..もう駄目だっ。」
 

 爪先で弱い裏筋を引っ掻くと、ついに三成は根を上げた。
 上半身を支えていた腕をかくりと折り、自分の唾液と先走りとで塗れ光る左近のものに顔を寄り添わせて、漏れる吐息が左近の濃い茂みをくすぐった。
 

「あぁっ..ん。」
 

 口戯から解放されぬまま、節くれ立った太い指がいつの間にか性器の後ろをまさぐっている。挿入こそされていないものの、性器と後孔の間の薄く敏感な皮膚を行き来したり、うずうずと震える淵の襞をなぞってみたりともどかしく動くそれにもはや三成はなす術も無くされるがままになっている。
 今日くらいは左近に良い思いをさせてやろうと思ったのに、これではいつもと同じように嬲られているだけではないか。
 そう思ってはみても下半身から沸き上がる疼きに全身を支配され、目の前の性器にさえ奉仕がおぼつかない。
 

「そろそろ物欲しくなってきましたか。では..。」
 

 誘うように収縮を繰り返す粘膜の入り口。自分で仕込んだ身体だから、左近にはその欲するところは手に取るようにわかる。
 

「それはだめだ..左近の風邪がこれ以上悪くなったら..俺は..その、困る。」
 

 挿入に備えて、本格的にそこをほぐそうとする左近を三成はなけなしの理性で制した。
 

「でも..。」
 

 確かにもっともではあるが、意外な申し出に左近は嬲る手を止めた。
 

「いいんだ。今日は我慢する。でも、元気になったら...な?」
「殊勝な御心がけです。それではこう、いたしましょう。」
 

 流石に挿入は諦めた左近だがこれではい、おしまいというわけにはいかない。何より先程から途中で放りっぱなしのものが収拾つかない。
 三成の身体を軽々と反転させると、自分の腰の上にまたがるような姿勢をとらせる。
 

「失礼。」
 

 2人分の性器を覆い隠す邪魔なエプロンの裾を掴み、三成の口に押し込んでしまう。
 

「ぐっ、ぅ。」
 

 苦しそうに三成が呻いたが、余計な口も聞けず好都合とばかりに左近は互いの性器をひとまとめにして大きな手で扱き上げる。
 熱くて薄い皮膚同士が先走りにまみれて擦れ合った箇所から何ともいえない刺激が生み出される。
 

「あふっ..。」
 

 張り出した仮首に擦られ、浮き出した血管が脈打つ鼓動までが直に伝わって、三成はただ布を噛み締めることしかできない。口内を占領する白いそれが唾液でぐっしょりと濡れそぼる頃には、左近の手だけでは足りず二人は互いの腰を激しく揺らめかしながらどん欲に頂きを求めた。
 

「んっ、ふっ!」
 

 三成の身体が弓なりに引きつり、絶頂の近さを知らせる。

「殿っ、一緒に。」
 

 告げると左近はいっそう強く手を動かす。
 どくり、と同時に大きく心臓が脈打つのを感じたと思った瞬間。先端の孔を押し広げて白濁した液体が溢れ、二人の下半身をしとどに汚した。
 

「ふぁっ..。」
 

 力つきて倒れ込んで来た痩身を受け止めると、左近は唾液で汚れた恋人の唇を己の舌で拭き清めてやった。
 

「気持ちよかったですよ、殿。
 気分がすっきりして風邪も大分軽くなった気が致します。」
「...ばか。」
 

 あまりに現金な言葉に形ばかり眉根を寄せて、それでも左近の回復の役に立ったことに三成は満足げにその胸に頬を寄せた。
 
 

 その頃、台所では赤く染まった物体を一杯にたたえた大鍋が奇怪な煙を上げていることに二人はまだ気付いていない。

 

 

 

 

 翌日。石田邸のリビング。
 

「謙信公直伝の卵酒(アルコール度数70%)だ!呑め!!」
「上田特産のおやきです!
 実家から送って参りましたゆえ、食べて精を付けてください!!」
「しばし待て。すぐにカフェ・ド・関ヶ原特製牡蠣リゾットができるからなっ。」
「ま、ゆっくり養生しいや。小西堂特製の風邪薬、おいていくさかいに。」
「こんなに汗が!初芽がお身体をお拭きします!!さぁお脱ぎになって!
 ついでにヴェポラップをぬりぬりして差し上げますわ
v
「この小娘が!黙っていれば良い気になりおって。
 我が三成に不義を働けばただではおかぬぞ!」
「耳元でそんな大声を出したら三成様のお身体に障るでしょっ。
 このファッ○ン大王イカ!その達者なリップに餅米詰めてイカめしにしてやるんだから!!」
 

 我が身の招いたこととはいえ風邪で共倒れという悲惨な現実を前に、止むに止まれず散々思案しつくし背に腹も代えられず身悶え歯ぎしりしたうえに、結局は愛しい恋人の身を第一に考えて、それでも血の涙を止められない左近の憎悪さえ混じった救援要請をうけて参上したチーム・カフェ・ド・関ヶ原に、三成は分厚い看護を受けていた。
 彼らは、マフラーやらガウンやらでぐるぐる巻きにされ、電気毛布と羽布団とに包まれ、毛糸のうさ耳帽子(兼続制作)までかぶせられてソファに沈む三成の周りを取り囲んであれやこれやと世話を焼く。
 静かに寝かせてくれ。これじゃ治るものも治りゃしない、と呟く当人に耳を貸す者はもちろんいない。
 

 一方、三成をこのような目に遭わせた天下の大罪人・島左近は独り寂しく隣の寝室に配流となり、ひたすらに自力での回復を試みていたのであった。(でも翌日には治った)

  

  

 
   

     


みったん破滅的愛のエプロン
その後看病に訪れた大谷は様々な液体に汚れたまま洗濯機に投げ入れられたカフェ・ド・関ヶ原備品のふりふりエプロンを発見→左近呪
回復した左近はすっかり空っぽになったワインの空き瓶に青ざめたとか
可愛らしさが前面に出て、聡明さが後ろに引っ込んでしまった現パラの殿
もうちょっと物事を深く考えようよ!冷静になろうよ!今回も左近の思うがままでした

ちょっとだけおまけ