俺だって男、なのだからそんな場所を弄くられても少しも気持ちいいはずなんて無いと思っていた。
薄い肉に覆われただけの平らな胸。その二つの尖り。
実際、初めてそこに触れられた時はくすぐったいだけで、閨の中だというのにけらけらと笑ってしまったものだ。
けれど思えばそれが左近に火をつけたようで、以来、愛撫と言えば左近はそこばかりを責める。
口を吸うのに始まって、適当に耳たぶやら首筋やらをなで上げた後、すぐにそこに手が伸ばされる。
ともすれば接吻よりも丁寧に舌を使ってたっぷりと唾液を塗りたくり、そのぬめりを借りて指の腹でまるくこね回す。
固く尖らせて、押しつぶし、それでもまだ立上がるのに爪先をめり込ませる。随分長い時間をかけてそこだけを嬲られるのは正直苦痛だ。
--..ぁっ、もう、そこ、いやぁ...お願い...、許して、ね、おねがい..。
思いつく限りの媚態でねだってみせてもなかなか許しては呉れない。
焦れ切った俺は仕舞いに自分の手を使って自身を慰める。
左近の指と、唇と、歯で苛められながら俺は無我夢中で扱き上げた。
なんだって二人の閨でこんな自慰のような真似をしなけりゃならないんだ。
胸への刺激だけで、なんて全然足り無い。もっと直接的なものが欲しい。前にも、そして後ろ、にも。
左近だってそれは分かっているはずなのに。
愛撫を受けながら達する様は彼をいたく満足させたようで、次からは自らの手を使うことも許されなかった。
手首を戒められ限られた刺激の中で、いい加減にしろ、と言ったはずが口から出たのは子犬が母親に乳をねだるような情け無い鳴き声で、それでも絶頂を得ることのできた時は自分でも驚いた。
そして気付いてしまった。
この身体がもう元には戻れなくなってしまったことに。
左近のおかげですっかり性感帯に成り果てたそこ。
夜毎にしつこく嬲られるせいで薄い皮膚はすり切れじくじくと痛む。
突起だけでなくそのまわりの部分までもが紅を増し、常に熱をもってぷっくりと腫れ上がっている。
着物に擦れる刺激すらたまらなくて、昼間は晒で覆っておかなければ居られない有様に、まるでどこぞの姫武将のようだと左近は嗤う。
--こんなになって...これじゃあ人前に出られやしませんね。
自分でそうしておいたくせに酷い話だ。
近頃では周りの肉までもが膨れて来たように思う。
--気のせいではありませんよ。
確かに昨今の殿ときたら本当に女子のようにおなりだ。
そんなはずはない。
そんなはずはないのだけれど、彼の大きな手にあるはずの無い乳房をもみしだかれる姿がふと脳裏をよぎる。
その瞬間にずくんと疼いたのは下肢ではなく両の胸の芯で、こうもはしたなく貪欲な身体に成り果てた自分に俺はため息を漏らした。
乳を開発する左近、でした。
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