これが本当に終わりなのだから、最期くらいは本当のことを言おう。

 

 

--愛しておりましてよ、我が君。

 それまで怜悧な皇帝の顔が、途端に赤子のように歪んだ。

--お前は..この期に及んでなおそのような戯れ言を。それほどに命が惜しくなったか。

 嘘ばかり吐き続けた唇は、真実を語る事に慣れていなくて語る言葉はまるで下手な台詞のようだ。
 心から人を信じられないのが全てを持っている彼の、唯一の欠落点。そして不幸。
 怒気を含んだ言葉に甄 は哀しく微笑んだ。それはきっと、慈母のようだったのだろう。
 ふいに、皇帝の肩から力が抜け、彼の身体が一回り小さくなったように甄 は感じた。

--...私もだ。私も、いつだって、お前を。今でさえ。

 最期くらいは本当の心を明かしてほしかった、と彼は続けた。
 目の前の卓には杯と短刀が並べ置かれている。

--どちらでもいい。選べ。

 たったこれだけがふたりを永遠に分つ。
 九泉の下で再会する事もない永い、お別れ。

 

 

 

 やっぱり。
 本当の事など言わなければ良かった。
 嘘ばかりを吐き続けた唇は真実を語る事をとうに忘れて、口をついて出た言葉は全部、

 

 

 

 

 嘘になる。


 

 

 

 


北方ベースの丕甄
皿の一枚がひっくり返ればあるいは、って奴です
北方の曹丕さまは激しく歪んでいて司馬懿とセットでコアヒットでした
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