土手に並ぶ赤い花。まるで俺を見送るような。
 日陰にばかり咲く陰気で不吉な花故に好かぬと言ったら、彼奴は笑って教えてくれた。
 

 殿、これを海の向こうの国では相思華といいまして葉は花を、花は葉を互いに想いあって咲くのです。
 ほら、この花には葉が無い。花の落ちる頃、それを追うて葉が出る。なんとも健気ではありませぬか。

 その花言葉、「想うはあなた」。

 この花の散った後、俺はお前に会えるのだろうか。
 ずっとずっとお前のことを想っているよ。たとえ彼岸の彼方からでも。

 

 

 

 陣幕の端にひっそりと咲く花をその名故に不吉だとあの方は言ったけれど、紅く燃え上がるが如き様はその人自身を想わせた。
 可憐で苛烈。凛として儚く、美しき身の内に毒を孕む。
 

 その花言葉、「悲しい思い出」。
 

 この身にもはや季節が廻り来ることは無く、失った心に思い出は蘇らない。
 もしも彼岸で再び相見えることができるのならば、殿、悲しみさえも左近には救いなのです。

 

 

 

 お役人様が刀を振り下ろしたその途端に、ぱっ、と河原の白州に赤い花が咲いて、あたしはそれをいつか見たあの花だと思った。
 名前は曼珠沙華。
 葉も無く、細い花弁を広げるそれを怖いと泣くあたしに貴方は、この世にとても良いことがおこる前触れに天から赤いお花が降る、これはその天上の花なのだと教えてくださった。
 貴方の血が咲かせたこの花は世の中を幸せにしてくれるのかしら。

 その花言葉、「また会う日を」。

 いつか渡る彼岸の地、またお会いする日を楽しみにしております、お父様。

 

 

 

 


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殿、左近、初芽の順で。
初芽はNovelの方の殿の娘設定で。一年ぶりにちょっとだけ都合良く復活。